敗北宣言

ブラジルの農場で初めて農業に出合ってからはや13年。
当時の新規就農者の大多数がそうであったように、私は自分が革命家だと信じ、革命のための行動として農業を選びました。そして日本で出会った有機農業。革命家たる有機農業者に薫陶を受け、「有機農業は世界を席巻する」という言葉に胸を熱くして、その革命の一分子として、各地に散り、一心に努力することで、有機農業はその土地土地を席巻し、いずれ大きな流れとともに世界を席巻するのだ、と。

 

およそ半世紀前に「有機農業」という言葉が生まれました。基本的には化学肥料・農薬の多投、環境破壊など、収奪的破壊的な新しい農業(慣行農業)へのアンチテーゼとして、社会運動として始まったのが有機農業といえます。
しかし当時の社会運動としての有機農業というのは単に化学肥料や農薬を使わないという農法ではなく、循環による持続可能な世界を作る基礎となる、社会づくりの考えかたともいえるものでした。

生産者と消費者が結び付き、理解を深めることで生産者は美味しくて安全な野菜を作るようになり、仕事に誇りを持てるようになる。消費者は安全とともに安心して野菜を食べることができる。

すばらしい、すばらしすぎる有機農業は、依然として有機農家の数は約1万軒程度で全農家数の0.5%、流通する農産物は全体の1%にも満たず、栽培面積も全農地の0.4%に過ぎないのが現状です。

半世紀経過してこの数字。50年前が有機農業の面積0パーセントだとして、50年で0.4パーセント増。つまり、少なくとも過半数の60パーセント有機を達成するにはあと7450年かかるのです。

有機農業は、やがて世界を席巻する?

冗談でしょう。

私はまだあきらめてはいません。農業者といえば農業者ですが、中身は革命家のつもりです。いつか有機農業は世界を席巻し、素晴らしい世の中になる。そのためにどう行動したらよいか、どう考えても今まで通りじゃだめなんです。
ここではっきりと「敗北宣言」をさせていただきます。

私の中の有機農業は死にました。

しかし、新しい有機農業を、革命を、2.3年目から始めています。革命はいつも畑の中で。